2008年10月10日(金)の毎日新聞「論点」に顔写真付きで、松沢神奈川県知事らと並んで大きく掲載された。NPO法人スワングループ事務局長としての署名入りだ。
1990年頃から分煙活動を続けているが、ここ最近はネットを見たというマスコミ関係者からの問い合わせが増えている。2002年にニッポン消費者新聞に掲載されたことがあったが、法人化以前で「スモーク・ハラスメントを考える市民の会」という名称が懐かしい。
神奈川県条例に関する記事の全文は以下の通り(一部、新聞とは違います)。
私たちNPO法人スワングループは、03年の健康増進法施行(施設管理者への分煙措置)を受け、15年ほど活動してきた市民活動を発展的に解消して法人化し、さまざまな角度から、たばこ問題の解決を目指し活動している。
たばこ問題の解決には、受動喫煙被害の防止だけでなく、未成年者の喫煙防止教育や、喫煙者がたばこを止めるための卒煙支援も必要だと考えている。
例えば、分煙策を講じている飲食店を「おいしい空気のお店」としてホームページで紹介している。約20人の会員が店に足を運んで確認し、一度掲載しても、対策が不十分になればリストから削除する。全席禁煙をうたっていても、待合室に灰皿があるだけでも「認定」しないので、基準は厳しい。他の飲食店も追従して欲しいし、利用客が店を選ぶ基準の一つを提示しているわけだが、これまでに苦情を受けたことはない。
神奈川県の条例骨子案は、分煙を容認し、飲食店などに3年間の猶予期間を設ける内容だが、たばこ対策が3年間遅れるという印象を受ける。さらに、分煙のあり方も気になる。一口に「分煙」と言っても、設備などにどういう基準を設けるかで、効果が全く違う。事業者がタバコ環境正常化の義務化に反対するのは、目先の利益しか考えていないためだろう。従業員の職場環境にも目を配るべきだ。条例は、飲酒運転撲滅などと同様、社会を良くする前向きなルールとしてとらえるべきだ。
「売り上げが減るから反対」という考えは、「もうかるから」と言って、産地偽装をしたり、汚染米を売るのと同じこと。わわれわれが拠点を置く福井県では2008年1月、タクシーが一斉に正常化(禁煙化)された(東京都と並んで8番目)が、これまで聞き取っている限りでは、正常化による影響はないという。
本来なら、草の根の活動などを通して民意が高まり、社会が変わることが望ましい。しかし、日本は民主主義とはいうものの、実際にはトップダウンでないと物事が動いていかない。市民団体などの草の根の活動も有効だが、法律や条例に比べると、穴を掘るためにスコップを使うかショベルカーを使うかというぐらい、効果や影響力に差がある。
だから、神奈川の条例制定は、先進事例として応援したい。条例制定のためには、規制対象となる事業者に譲歩する政治判断も必要なのだろう。分煙推進の取っ掛かりとして、まずはどんな形であっても条例を作ってほしい。受動喫煙被害防止策を「努力義務」規定にとどめた健康増進法を補う意味もあるし、そもそも、健康増進法が一般に理解されていない。これまでの議論では、知事と県議会や利害関係者の対立構造ばかりが強調されているように感じる。事業者から営業権の侵害などを理由に提訴されるかもしれないとも聞いているが、県が敗訴するとは思えない。受動喫煙被害の防止策は、例えば飲食店に対し、商品である「酒を売るな」とか「県産品以外の料理を提供するな」と規制するものではない。むしろ裁判は、条例の意義を明らかにできる良い機会になるのではないか。
10年後、20年後を考えると国の法律で今回の神奈川県条例のようなものができるのは間違いないが、その先駆的な取り組みとしてがんばって欲しい。
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