毎年、3月2日は「海のある奈良」と言われる福井県・小浜市でお水送りという行事がある。テレビニュースで見ていて知っていた。全身白色の衣装で身を包んだ集団がホラ貝を吹きながら行うイベントだ。行きたいと思ってはいたが年度末はいつも忙しかった。
撮影依頼が入り、夏頃から情報収集や下見を行ってきた。小浜の中心部から少し離れた場所にある神宮寺や鵜の瀬は、まったく人気(ひとけ)の無いところだった。
テレビニュースでは、クライマックスの鵜の瀬で遠敷川に御香水(御神水)を流し込んでいるシーンしか報道されていないが、午前中の山八神事(見学不可。鵜の瀬から更に上流にある八幡神社)から、昼からの神宮寺での弓取神事、ホラ貝を吹きながら一本歯の下駄を履いた白装束の一群が本堂に入っていくまで、ゆっくりとゆっくりと祭りが進行する。
2013年は、雪やみぞれが降る中、境内には大勢の人が数十分身動きせずに待つ。大松明を振りかざしながら本堂から出てくる「だったんの儀」の頃には、辺りが暗くなっており自然とテンションが上がっている。境内の大護摩焚から火を貰って、大松明、中松明に続いて、1000名以上の観光客が手松明(1本1500円)を持って鵜の瀬まで歩きます。ゆっくりと40分くらい掛かる。
鵜の瀬に入ってもすぐにお水送りが始まるわけではなく、護摩焚の周辺で待つ。
いよいよ、ホラ貝とともに白装束の対岸に現れ、周囲は興奮に包まれます。そこでも、すぐに始まるわけではなく、住職が日本刀で邪気を払い、朗々と和紙に書かれた送水文を読み上げ、静かに、川に流す。
そのあと、クライマックスのシーンは周囲が明るくなるほどのストロボが焚かれる。
重い撮影機材を持って神宮寺まで戻り、祭りの後を歩いてみた。あちこちに小川が流れ、水の音が心地良いBGMになっていることに気がついた。
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