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広島競輪場

取材:2000年12月

 中国地方の主要都市の中でも最大規模を誇る広島市は、人口100万人を超えるマンモス都市である。原爆投下(1945.8.6)の戦後から見事に復興を成し遂げ、平和を祈る街として広く世界的に知れ渡っている。広島市についてはhttp://www.city.hiroshima.jp/C/にアクセスしてください。

 広島競輪場はJR広島駅から南へ無料送迎バスなどを利用すれば約20分ほどの所にあり、交通便としては比較的楽な位置にある。
 さて、広島競輪場は第1回の「ふるさとダービー」や共同通信社杯競輪などを開催するなど地方競輪場としては積極的な新規開催を誘致してきた経緯がある。その都度、施設の拡充を図り、1センター特観席の建設や競輪場周辺整備事業はその一環である。

 バンクは、見なし直線距離57.9m
      ホーム 幅員10.5m
      バック幅員8.5m
      センター幅員 7.3m
      センター部路面傾斜30°47´34
      直線部路面傾斜3°26´1

となっており、400バンクとしては一般的な形状だが、捲りが利きづらい印象だ。

 私は大昔から競輪選手をやっていて昔のことばかりで大変恐縮だが、現在では常識となった自転車の輸送システムも、当時は革製や布製で出来た「輪行バック」に愛車を分解し、競輪選手の七つ道具(自転車一式・ヘルメット・シューズ・練習着・プロテクター・工具等)を入れて、さらに衣類・日用品等がギッシリ入ったバッグと共に鉄道・航空などの交通機関に飛び乗って全国津々浦々を旅したものだった。
 輪行バッグと旅行用バッグ合わせて軽く30〜40キロはある重い荷物を両手に持ち、駅の階段を上り降りするのは相当の体力を必要とし、乗り換え発車時刻が迫っている時などは、それを抱えて階段を2,3段駆け上ったこともしょっちゅうだった。
 今の選手はデビュー時から、こういうハードケースで輸送するから楽だ。貴重品の入った小さなバッグ一つを小脇に抱え、ピシッとしたスーツ姿で移動でき、誠に機能的で疲れも少ない。第一、競輪選手だと知られて見知らぬしつこいファン(失礼)に絡まれることもなく、スピーディーに移動できる面は大変に良いことである。

 かれこれこのシステムが導入されて約10年は経ったと思うが、写真(右上)で見るようなハードケース(5 ~10万円)に必要な一式を詰め込み、宅配業者に自宅まで集荷に来てもらい前検日に指定配達する。輸送システムの発達した今日、滅多なことはなくなったが、当初は前検日指定時刻までに到着しなかったことや、またある選手は、向日町競輪場に送るつもりが、「向」と「日」の字を書き違えて宮崎県の日向市に送ってしまったという笑い話で済まないこともあった。
 しかし、昨今、選手も慎重に前検日に到着するよう十分な余裕をもって集荷してもらうようになったし、業者も競輪選手用の自転車は前検日指定時刻に必着という意識が固定してきたため、余程のことがない限りトラブルは起きなくなった。また、輸送システムのマニュアルも作成され、選手は個々の責任において輸送することが義務付けられている。

 

 いずれにせよこうした利便性は選手自身が考え、各関係団体と折衝し機能が万全となってきた。何事もシステム化するまでは、大変な時間と労力を要する訳で、前にも書いたように「不便のあるところに改善の余地あり」である。
 むろん「競輪ファンの声なき声を察知しファン本意の改善をすることが何より先決」なのは言うまでもない。
 ほとんどの新しい宿舎は、エレベーターを設置しているが、どういうわけか広島競輪場の宿舎はエレベーターがないのと食事の内容の悪さが難点。

 選手宿舎は、競輪場敷地内、選手管理棟の合い向かいにある。地上3階立ての素晴らしい宿舎だが、難点を言えばエレベーターがないことだ。
 選手は開催の半分以上は、宿舎生活時間が多いから、部屋割りにしても便利な方が良い。つまり、風呂に近く、食堂に近く、トイレ洗面所に近いといった具合にだ。大体のところそういう利便性の良い場所は、地元選手が陣取り、不便な場所は遠征の選手となっているのが相場だ。遠征の選手が一般的に成績が悪いというのは、こうした宿舎での不便や番組の不利なども影響しているかも知れない。しかし、地元に戻ればそれが逆になるわけで、ま、地元に頑張ってもらうというのも興行上仕方がない一面もある。
 しかし、遠征の選手であれ、地元選手であれ、公正安全な競技をしてもらうためには、宿舎での生活においても不平等をなくすことが先決である。

 選手が自転車を整備する上でのポイントはいろいろあると思うが、「車輪の振れ」を直すことは重要な整備の一つである。競輪で使用する部品は日自振(日本自転車振興会)の許可した部品しか使えないが、その中で選手は工夫して自分に合った自転車を完成させる。車輪は軽合金の物で軽い素材で出来ているから使用しているうちに「振れ」が出てくるため整備することが多くなってくる。
 器用な選手は自分でするが、技術を必要とする整備だからもっぱら検車員に頼むことが多い。スポークを硬めに張るのが好きな選手もいれば、柔らかめに組む選手もいて、また、より強度を求めてスポークが交差する部分をハンダ付けする選手もいる。全国各地の検車員の中には、この車輪組みの名人もいて、選手はそういう検車員に依頼することも多い。
 ちなみに、私は器用だから自分でこの車輪の振れを整備するが、微妙な振れが取れないときは、やはり専門家に整備して貰っている。

 「微差」で笑うも泣くのも脚力次第だが、それに伴って車輪のバランスを調整することは、重要な整備として気を使う項目である。

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