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        ほそうでふんせんき
ナラの「細腕奮戦記」

第1話 「ナラ旅に出る!」

 時は2001年2月6日午後、小雪が散らつく福井市内のとある公園で小学生数人に虐められていた子犬が、たまたまそこを通りがかった女の人に助けられた。
 その助け人は、競輪界の鉄人・鷲田善一選手の奥さんで、奥さんはその足で子犬を動物病院に連れていき、健康診断をした後そのまま自宅まで連れて帰えることにした。幸い子犬は元気で、その後も順調に育ち、名前を「ナラ(仮称)」と付けられ里親探しのため鷲田選手の「Zen1 World」で紹介してもらったが、1ヶ月が経とうとしているのに何の音沙汰もないことに業を煮やしたナラが、ついに立ち上がった。

 これは人間達の不条理を諭すべく、果敢に挑戦し、平和を訴える一匹の子犬の奮戦記を綴った実話物語である。(^^;

2001.3.6 無断転載禁

(ナラの独り言)
「かれこれひと月が過ぎようとしているわ。この家に来てからわたしは、人間様も悪い人ばかりじゃないってこと、分かったわ。
 まだ生まれて3ヶ月ほどしかたってないから世の中のことそんなに分からないけど、でも人間社会って複雑で大変ね。この家(ウチ)に来てからつくづくそう思ったわ。だってここんちの人たちと一緒にテレビを観ていて思ったんだけど色々な事件があるじゃない。政治は混乱しているし、経済は低迷しているし、それに原子力潜水艦が実習船に衝突したっていうじゃない。ほんと良い話ちっともないじゃない。ご主人様(鷲田善一)も、「競輪界も厳しい情勢だ」って言ってたわ。何だかよくわかんないけど、私、この家にずうっといたいんだけど気が引けちゃって…。里親探しも進んでいないようだし困っちゃう。わたし旅に出ようかしら。」

 というわけで、ナラは所帯道具一式を背負って旅に出る決心をしました。心残りは、大の仲良しだったグレムリン(鷲田家で一番若い猫)とのお別れです。
 いつも二匹はそばに寄り添って喧嘩もしましたがコロコロじゃれ合っていました。ニャン太爺ちゃんやイタキチおじさん、シーサーワン、シーサーツー兄弟、モモ姉ちゃんともお別れですが、一番辛いのはグレムリンとのお別れです。グレムリンに「わたし旅に出ることにしたわ」って言ったら、「ウソだろ」って言いました。

 でも、奥さんがわたしとグレムリンの前で「ナラは今日から旅に出るそうなの。グレムリン、お別れの挨拶をしましょうね」って言ったので、急に二匹とも神妙な顔つきになってしまったわ。

 そうしたら、グレムリン、下を向いてしまったの。心配してくれたんだわ。
 奥さんが、私とグレムリンの前で旅に出る諸注意事項を話していたときも茫然として聞き入っていたわ。

 そしたらグレムリン、急に下を向いて泣き出したの。私も悲しくなっちゃったわ。

 でも、それからグレムリン気を取り戻したのか、私に「元気で頑張ってこいよ、道ばたに落ちている物は腐ってないか良く臭いをかいでから食べろよ。困ったらいつでも帰ってこいよ」って言ってくれました。

 私も辛かったわ。「背中に哀愁が漂っていた…」とイタキチおじさんが言っていたわ。

 それからグレムリン、私のほっぺにチュッとしてくれたの。グレムリンってほんとに優しいネコだと思ったわ。やがてグレムリンは、いたたまれなくなったのかその場を離れたわ。

 そうした状況が続いたんだけど、何だか不安と寂しさで悲しくなっちゃったんだ。もう旅に出るのよそうかな〜って思ったの。

 でも、女が一度決めたら?あとには引けないわ。覚悟を決めたからには、私旅に出るわ。
 で、わたし、♪あずさ2号の曲に乗って旅立つことにしたの。ネットをご覧の皆さんも、この歌を口ずさんで私をお見送りしてね。じゃ〜ね。

♪明日 私(ナラ)は旅に出ます
あなた(善一さん)の知らないひと(犬)と二人(匹)で
いつかあなた(善一さん)と行くはずだった
春まだ浅い 信濃路(福井競輪場)へ

行く先々で想い出すのは
あなた(善一さん)のことだと分かっています
そのさびしさが きっと私(ナラ)を
変えてくれると思いたいのです
さよならは いつまでたっても
とても言えそうにありません

私(ナラ)にとって あなた(善一さん)は今も
まぶしいひとつの青春なんです
8時ちょうどの あずさ2号(雷鳥2号)で
私(ナラ)は 私(ナラ)は あなた(善一さん)から旅立ちます


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