一条さゆりの真実-虚実の狭間を生きた女
前半は人気ストリッパー一条さゆりさんの晩年に付き添っていた加藤詩子が直接聞いた話が中心。「すごい人生もあるもんだなー」と思いながら読み進めた。
しかし、中盤からは、一条さんの死後、60名もの人にインタビューを繰り返し、参考資料を紐解いての驚くべき内容となっている。信じていたのに嘘が多すぎると彼女自身も悩みながら、それを含めて受け入れようとする姿は感動的だ。
嘘のなかに真実が含まれている場合がある。嘘というかたちをとらなければ語れない真実がある。嘘によって飾らなければ隠すに隠せない心の傷がある。
本の中に登場する釜ガ崎の稲垣浩さんを知っているということもあってどんどん本に引きつけられていった。
誇りを持って生きたい
書評では、伝記、文芸、風俗と紹介されることもある本だが、戦後の貧困や日本の高度成長や差別問題を真っ正面から捉え、自分の生き方に付いて考えさせる迫力の1冊ということが出きるだろう。
上下2段組で425ページ(写真はほんの10枚程度しなかい)という圧倒的なボリュームの中でどんな人間も誇りを持って生きているのだという愛が感じられる1冊だ。
参考書評:酔眼亭日乗
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