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玉野競輪G3 第1日目 選抜 2002年1月15日(火)

追い込み選手にとって、目標の先行選手を捨てて切り換えることは後ろ髪を引かれる思いだ

【レース経過】

 号砲と同時に6番車の宮本が前に飛び出すと、これに8番車の甲斐が続き、その後少し遅れて9番車の南部以下が追った。

 一周回目の4コーナー付近で2番手の甲斐がこの位置を嫌い後方に車を下げた。各車とも有利な位置を求めてめまぐるしく動いたが、2周回目の4コーナー付近で、前から宮本 - 柳 - 斉藤 - 上野 - 南部 - 松本 - 林 - 鷲田 - 甲斐の並びで落ち着いた。

 赤板表示を迎える4コーナー付近から、後方7番手以下の林 - 鷲田 - 甲斐の近畿ラインが上昇。林は、ジャン前1センターで一旦、上野 - 南部 - 松本を牽制してから、ジャンと同時に発進。そのまま前団を叩いて4コーナーで主導権を奪った。

 しかし、林は主導権を取った後少し流したため、後方の上野 - 南部が4コーナーから一気にカマしてきた。林もこれに合わせて踏み込んだが、スピードに乗った上野が最終2コーナーで林を捕らえ捲り切った。最終2コーナー出口、林後位の鷲田は、上野 - 南部の3番手に切り換え、最終2センターで前走の4番車南部をすくい、最終4コーナーで上野と南部の中を割った。

 ゴール前の直線、中を割った鷲田だが、伸びがもう一つで、2番車柳が鷲田を交わして1着でゴールした。

【非情の切り換え・パート1】

 現代の競輪競走は、地区別ライン競走が全盛となっている関係で、番組も勝ち上がり段階では3分線が多くなり、選手は同地区の先行選手を足場に結束し、レースが展開される傾向がある。

 追い込み選手は、出来る限り同地区の先行選手が走りやすいよう位置取りを考え、仕掛けどころに合わせてダッシュ、時には他のラインをブロック、そして時には4コーナーギリギリまで追い込みを駆けず先行した選手を残してやるような努力をするものだ。

 競輪の先行選手と追い込み選手の関係は、さしずめ野球でいうならピッチャーとキャッチャーのような関係で、サッカーならミッドフィルダーとフォアード、ディフェンダーの関係のようなものだろうか。

 兎に角、勝敗を左右するのは、利害関係で成り立っている両者の呼吸がピッタリ合っていることと、何より両者(ライン)の信頼関係が伴っていることが第一条件である。先行選手は後ろを信頼して駆け、追い込み選手は先行選手を庇いながら走る。これこそ競輪競走を知る上での重要なポイントの一つである。

 しかし、野球のピッチャーとキャッチャー、サッカーのMFとFW,DFの関係と、競輪の先行選手と追い込み選手の関係の決定的な違いは、最後(ゴール・試合終了)まで結束しているかどうかということだ。
 チームプレーたる野球やサッカーなどと違い、個人競技たる競輪競走は、途中(最終4コーナー)までの結束であって、(貴方が1着で私は2着で良い)という気の利いた関係ではない。誰もが(自分が1着であれば他はどうでも良い)というのが選手の本音である。だから、道中は結束していても、(このままでは自分はダメだ)と察した場合は、「非情の切り換え」があるわけだ。

 で、きょうのこのレース。同県の林が最終2コーナーで上野に捲られた瞬間、切り換えるかそれとも林を入れるか、難しい判断に迫られた。
 私は、ライン重視の競走に徹している。しかし、勝負所では、過去の経験から切り換えて前に前に踏み込んで行った方が良い結果が得られるということから、非情の切り換えを敢行した。追い込み選手にとって、目標の先行選手を捨てて切り換えることは後ろ髪を引かれる思いだが、しかし、これは勝負に対して妥協を許さない強固な姿勢の現れである。

 勝負は勝つことに意義があり、それが修羅場で生き抜く者の鉄則である。

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