午前6時30分、ワンディロードレースの号砲がなった。こちらは1周44.6kmの帰伏にとんだコースを2周する89.2kmのレースだ。163名の選手が一斉に飛び出して行った。
午前6時40分、予定通り、インデヴィデュアル・タイムトライアル・ロードレースの第1走者がスタートした。こちらも緊張してくるなか、スタート前のストレッチとマッサージを佳史に施した。
午前6時50分、スタート位置に向かって佳史が向かった。
自転車の整備は万全だった。車輪だけは借り物というものの1台80万円は下らない代物だった。高校生ごときのレースにそんな高価なモノを使用させなくても、という考え方もある。全くその通りだと思う。しかし、機材がある以上は、100分の1秒を争う競技だから、コーチとしては良い物を使わしてやりたい。
いや、コーチではない、親だった。
自分の夢を乗せて、息子が走る姿を見たい、そういう親心だった。
午前7時01分、43番目の走者がスタートすると、佳史はスタート台に上った。こちらの緊張をよそにリラックスした表情だった。
44番目の走者がスタートした。次はいよいよ45番目・鷲田佳史のスタートだ。
選手を紹介するアナウンスが流れた。富山国体での優勝やオーストラリア大会出場など戦績を告げると、計時員のカウントダウンの指示でスタートした。
23.8kmのコースに向かって勢い良く飛び出して行った。それは、あたかも自分が走っているような、そんな錯覚に陥っていた…
|