初日特選を制した強力先行の森田は準優脱落し、松山は無難に決勝に進出した。三重の鈴木-水谷コンビも勝ち上がってきたが、この捲りを封じれば私の優勝は十分にあると思った。
それに松山は初日先行を失敗しているだけに今日は絶対先行で臨んでくれるだろうし、私の優勝確率は70%いや80%を越えるのではないかと、私は朝から優勝したときのパフォーマンスを考えていた。
しかし、これがそうはいかなかった。前回の四日市決勝でもそうだったが、相手のいるレースはそんなに甘くはなかったのだった。
決勝戦はスタートしてからまもなく鈴木-水谷-平田-土井-立神-松山-鷲田-国崎-筒井の並びで落ち着いた。
赤板、松山以下が定石通り上昇を開始すると、鈴木は一旦引きかけたが土井-
立神の切り換えを嫌って松山のインをすくって再び上昇。すかさず、松山はアウトから巻き返して、鈴木はインで粘った。これで絶好の展開になった。
鈴木さえ封じ込めておけば捲り上げて来る者はまずいないだろう。
松山もそこのところは心得ていて、最終ホームストレッチを過ぎても仕掛けない。私はこれで頂きだな、と思った。
松山は1コーナーから徐々にペースを上げ、2コーナーから猛然とダッシュ。バック追い風ということもあり、駆かりは抜群だった。この駆かりではインで包まれている鈴木も捲くってはこれまい。あとは「ご苦労様」と私が松山を交わすだけである。しかし、それがどうしたことか3コーナーを回ったところから「これはまずい」と思った。
まずい、というのはあまりの駆かりの良さに「差せるだろうか?」という心配であった。その予感通り、4コーナーを回っても車が伸びない。そんな馬鹿な。いくら松山がペース駆けとはいえ、すんなりの先行ではないか。
後ろの国崎がでかい声で中を割って来た。ゴールした瞬間、私の右に素速く通過した者がいた。白い1番車鈴木のユニフォームだった。まさか…。鈴木に抜かれたのは分かった。ゴール後1周してくるとオーロラビジョンのスリット写真がレースを終えたばかりの選手の目にも入ってくる。
オイオイ、松山も抜いてないのかよ。私は、走る前、勝利のパフォーマンスは考えていたが、無惨な敗北のシーンは考えだにしなかった。
なぜかヤジがなかった。本命にもかかわらず、こんな負け方をしてなぜヤジがなかったのだろうか?
勝利の女神は一体どこで昼寝をしていたのだろうか?それとも私の勝利のパフォーマンスをあざけわらっていたのだろうか?名古屋の女神は私が嫌いなのだろうか?
吹っ切れない思いで私は、名古屋競輪場を後にしたのだった。
レース後、検車場で優勝した鈴木幸紀選手とツーショット。
インに包まれながらもあの位置から上がりタイム11.30(最終日一番時計)で捲りきるのは立派。
負けた私を責めるより勝った鈴木選手を誉めるべきか。
先行力に磨きがかかればS級も間近では。
今後が楽しみな三重の新鋭である。
年齢差が21歳。長男の年に近い(^^;
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