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富山普通競輪 第2日目 準優 2000年8月12日(

 少々の野次ぐらいはストレス解消のファンサービスだと思っている

 初日特選は、後藤の頑張りで結果には満足していたが、残念に思ったことが一つあった。それは、ファンからのT野次Uだった。前回(2000年7月1〜3日)来た時もそうだったが、私に対する富山のファンの野次といったらひどいものだった。
 富山の選手(今回は宮越大、前回は堀田英利)に勝ってもらいたい地元ファンの心情は察するが、だからいって悪役に回された私への過激な野次には正直言って閉口した。
 例えば選手紹介時に各コーナーから「鷲田のコジキ、帰れ!」「こけちまえー」など、(富山のファンは、昔こんなハズではなかったのに…)と最近の自分の不人気ぶりがうかがえた。中には「福井の田舎者!」というものまであり、これには笑った。富山も福井と対して変わらない街なのに、田舎者に田舎者と言われて、選手紹介中、思わず笑ってしまった。
 物語には悪を退治する星の王子様(正義の味方)がいて世の中を平和に導く、ということが一般構成になっているが、その体でいけば、悪(鷲田善一)を退治する星の王子様(宮越大、堀田英利)には何があっても絶対勝ってもらい、富山を平和で活気に満ちた街にして欲しい、という願いのT現れUなのかもしれない。それ故、富山の選手は一層頑張らなければならないと思う。
 私はこの平成不況のさなか、わざわざうだるような暑い日中に競輪場にまで足を運んで頂けるファンのため、少々の野次ぐらいはストレス解消のファンサービスだと思っている。
 だから、悪役を大いに買って出ましょうと思った。私は、(富山では悪役でも福井に戻ればT老体の正義の味方Uになる)ことを信じて気を取り直していた。

 準優は、朝から身体が重かった。大体二日目からは身体が軽くなるのが今までの通例だったが、陽気のせいか、エアコンのせいか、気持ちのせいかは知らないが、昼を過ぎても気だるさが抜けなかった。
 準優のメンバーは、昨日特選を制した森田と予選から勝ち上がった岐阜の新鋭・土岐幹多(83期)、それに兵庫の丸元大樹(82期)の先行選手を柱とした三分戦だった。
 昨日の森田の出来からすれば、今日の準優戦も苦戦を強いられるのは、覚悟していた。
 森田とは5月(2000年)の名古屋で対戦し、初日特選森田1着・鷲田5着、準優森田8着・鷲田1着だった。森田はこの時の準優戦、私の好ブロックに遭い優勝戦進出を阻まれている。福井の訳の分からないオッサンの洗礼を浴びているだけに、ここは気を引き締めて来るだろう。
 選手というのは対戦相手の状況を克明に記憶しているものだ。取り分けS級昇級を目指している選手は轍を踏まされないよう作戦を変えてくる。こちらもまた返り討ちにしてやる作戦を考える。ただ私は頼りにする先行選手次第だから、分が悪い。いろいろ考えているだけで更に身体が重くなってきた。
 準優8レースの号砲がなった。森田 - 松隈 - 今村の九州勢が前に付き、丸元 - 鷲田 - 山下の近畿勢が中団、土岐 - 山崎 - 笹倉の中部勢が後ろから攻める展開となった。
 私は昨日同様、丸元に作戦を与えた。兎に角、先手を取ってもらわなくては私の出番はない。丸元は顔を見るのも初めての選手だが、そこは近畿の仲間。丸元も気合いを入れている様子だった。 
 残り2周、後方の土岐 - 山崎 - 笹倉が上昇するのに併せて丸元もダッシュした。さらにそれより鋭いダッシュでインコースの森田も発進。赤板では3列がモガキ合う状態。丸元のタイミングの悪さもあり、インとアウトからサンド状態で踏み場をなくした私は丸元を捨て、九州の後ろに下がってインを突いた。

 ジャンのバックで今村をすくい、3コーナーで更に松隈のインをすくい、森田の後ろを奪い取った。さすが、我ながらズルい追い上げであった。4番手の森田はこの後、昨日みたいに2コーナーから捲りを打つだろう。
 私は重い脚を引きずるように森田の後ろを追走した。最終1センターから森田が踏み込んだ。私もその動きに合わせて踏み込んだが車が出ない。
(待てーッ)心で叫べども森田はグイグイと進んで行く。
 折角、森田の後位を奪い取ったものの、私はものの見事に離れてしまった。

 レース後、うつむき加減にクールダウンをしている私のもとへ、選手紹介(第9レース)を終えたばかりの山本剛がニコニコ顔でやってきた。

 わたしは、なぜ山本が近寄ってきたかを知っていた。

 私は彼に「昨日、山本が離れた理由が分かったよ」と言うと。
 でしょう?といった表情で私に微笑みかけるのだった…。

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