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大垣普通競輪 第3日目 A級決勝 2000年9月19日(火)

 臨機応変に時々をくぐり抜けていける野生観が望ましい

 決勝戦は2分戦となった。松山勝久 - 鷲田善一 - 藪本賢一 - 京田晃の近畿4車に 橋本大祐 - 竹内久人の中部2車。その中部には和田昼善 - 川添輝彦が付きそうで、廣瀬克成は先手を獲るラインに切り換えることが予想された。

 しかし、一枚岩の中部とは違い、近畿は遙か競輪創世記の時代からT確実な連携は持たないU何でもあり?の地区だから、その辺、もし松山が前付けして下げた場合、6番手が保証されるかどうかは心配なところだった。
 この近畿地区のマーク屋の連携を評して
「ライン無用、自分の優位な位置を求める競輪、これぞプロの神髄!」と絶賛する他地区のマーク屋もいれば、「近畿は見苦しい。そんなことばかりやっているからいつまで経ってもタイトルホルダーが生まれないんだよ」とコケにする見解もある。

 いずれにしてもこれはその昔からのT伝統Uだから、今更その流れを変えようとしたところで無理な話で仕方がない。この伝統は今後も続くことだろうし、議論されることもないであろう。そういう体質が根付いている地域(特に大阪、兵庫)だからである。
 近畿は大阪を中心とした商人根性の街だから、いちいち人のことなどカマっていられない。
 表情ではいつも恵比寿顔でニコニコと
(ワテほど良い人間、ほかにいまへんで)と相手を油断させておいて、腹の中はいつも(客観的に見てなんぼ儲かるか)損得の事しか考えていない。と批判すると反感を喰うことになり集中砲火を浴びることになりかねない。
 しかし、商人
(=競輪選手)としての駆け引き(=損得勘定)が、レース形態にも現れているのではないだろうか、というのが私の見解である。
 だから、そんな歴史と伝統を持った地域社会に生きる競輪選手が平生のレースにおいて一枚岩になどなれるハズがない、というのが学者でもない私の意見である。

 じゃ、お前(私)はどちらが良いと思うか?の質問には、こう答えるつもりである。

 「一枚岩と称して四六時中いつもべったりとくっついて行動している地区をハタから観ていると、気持ち悪く自分の性には合わないような気がする。一枚岩もいつかは分裂するときがあり、それなら臨機応変に時々をくぐり抜けていける野生観が望ましい」と。

 そんでもって決勝戦。
地元の 橋本大祐 - 竹内久人は、死んでも前には付かないだろうし、その要求通り、松山と私は前付けから活路を見出す決意をした。
 赤板を過ぎた辺りから、橋本はきのうの準優戦と同様の位置から上昇してきた。ジャン前バック、すべては松山の判断に任せるしかない。
 橋本はギリギリの所まで誘導員を使おうとしたが、松山はその一瞬を見逃さなかった。
 誘導員がバック線で待避すると同時に松山は猛然とダッシュ。一気に橋本をインからすくって先頭に躍り出た。
 私もたぶんインを付くかも知れないと構えていたから、千切れないで追走できた。初日特選のように連結が離れるような失敗はこの決勝戦では許されない。松山が先手を取った時点で
よっしゃーと思った。
 ただ、うしろを振り返ると藪本 - 京田が付いていない。それどころか私のすぐ後ろには橋本 - 竹内の地元コンビがぴったりくっついているではないか。

 あと1周のホームを過ぎ、松山は全開で逃げる。最終回1コーナー付近、金網の外側から声が飛んだ。

 
「鷲田! 仕事をしろよッ!」

 誰とも知らないそのファンの声に諭されるように、私はいつ捲って来るともしれない橋本を警戒した。

 松山は45歳の福井の重鎮を引っ張り、橋本も45歳の岐阜の御大を勝利に導く案内人として、両者の使命感が火花を散らす。

 最終回2コーナー直線立ち直って、その案内人が捲ってきた。勢いは鈍かったが、被ってしまっては面倒なことになる。一応、ファンの言う通り仕事をしなければならない。

 最終3コーナー、私は橋本をブロックしたあと、すぐインを閉め、岐阜の御大の追い込みに注意した。

 竹内は外から追い込んで来るに違いない。私はそう思った。大垣の直線は長いから、竹内に先に踏み込まれては交わされる可能性もある。昨日の準優でも私は外から竹内と僅差まで迫った。それに松山も垂れてきた。私は最終4コーナー、ちょっと早いと思ったが必死で追い込んだ。

 ゴール手前、竹内が中を割ってきた。予想外だった。橋本をブロックした影響か車の伸びもなかった。

 ゴールした瞬間、どちらが勝ったか分からなかった。残ったようにも思ったし、交わされたような気もした。
 結果は、8分の1輪差で2着だった。地元の執念がこの8分の1輪差に現れたような気がした。
 
歴史に残る?45歳同士(合わせて90歳)の壮絶なゴール勝負!は、岐阜の竹内久人に軍配が上がった。

 今回はこれぐらいで勘弁したる。この次は許さへんで。
 近畿の老舗のマーク屋は、次回にその借りを返すべく、大垣競輪場を後にした。

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