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大垣普通競輪 第3日目 A級決勝 2000年11月11日()


【教訓・その3】 人というものは、常に自分を正当化し、自分を中心にして世界は回るように考えている。

 決勝は初日の特選から6人が残って初日以上の激戦メンバーとなった。

 島田はピンピン(初日1着、準優1着)で勝ち上がり、準優戦の闘いぶりなどは後続をブっちぎっての1着で「いやー強いなー」と誰もが思わず口にしたほどだった。
 ただ決勝の顔ぶれは、(松尾 - 兼子 - 平田)の地元勢、(中川 - 水谷)の三重コンビ、(片山 - 鷲田 - 武田)の近畿勢に対して初日特選みたいに島田にはラインが無いということだった。いかなる島田とて単騎では苦しいだろうと思っていたら、なんと武田哲二(京都・65期・30歳)が「島田の後ろに行く」というのである。その武田は片山とは同期(65期)で、準優第9レースでは片山の捲りに武田が乗って武田1着・片山2着のワンツーフィニッシュを決めている、というのにだ。

 女子高生に言わせればウッソー?マジ?信じられない、こんなのあり?ってな具合だろうが、でもそれが近畿のマーク屋らしくていいのかも知れない。チャンスのあるところ我が道を行くである。(そういう自分だってきのうの準優では、藪の指定席券を投げ捨てて、ちゃっかりグリーン車に乗ってたじゃないの。ったく人のこと言えないわよ。ふん。)それもそうだ。
 何事も自分の都合で物事を考えてはならない。何処かの地域みたいにラインべったりとくっついていることはないのだ。同じメンバーで闘うことは一生に一度しかないことだしお互い悔いの残らないレースをしようじゃないか。私は妙に悟ったようなことを考えていたが、内心(しまった!これなら俺が島田の後ろに行くと言えばよかった…)と思った。人の心はまったく現金なものである。人というものは、常に自分を正当化し、自分を中心にして世界は回るように考えていることに気づくのである。それが人間というものであり、競輪競走というものだ。私は、好調島田を潰すには結束が一番だと考えていたが、それも仕方が無いと思っていた。

 決勝は誰が前に付くか分からなかった。本来、事故点は公表しないということになっているが、どういうことか中部の予想紙には事故の累積回数が載っていた。つまり累積点数ではなく、失格・重注・走注の回数が載っていて、それを計算すれば大体の検討はつくということになる。事故点60点に近い選手は松尾、中川、それに私で、島田は90点を超えてしまっている。号砲が鳴って数秒が経過し、ここが限界とばかり私が前に出ようかと思ったら8番車の中川が堪え切れず前に飛び出して行った。

 決勝は2400メートル6周だった。2周回目で前から中川 - 水谷 - 島田 - 武田 - 松尾 - 兼子 - 平田 - 片山 - 鷲田の並びとなった。

 この日は朝から風が強く、10レースになってからは更に強くなり冷え込んできた。誘導員のピッチも速かったが、最後尾の私はこれは願ってもない並びになったと思った。
 前日の岐阜放送のテレビの録画撮りで、司会者から「どういう展開になると思いますか?」との問いに「片山君が先手を取って、私はぬくぬく番手を回り、3番手以下がもつれる状態で4コーナーまで来て、さらにゴール前片山君が垂れて私がチョイ差しで優勝するような展開を臨みます」と言ったらこれが大受けだったが、それがまんざらでもなくこの並びなら実現するのではないかと思った。このまま行けば、松尾は絶対にジャンから発進するだろうし、すんなり行けば片山は4番手を回れる。そして島田を後位に置けばチャンスはあると思っていた。

 果たして、松尾はジャン前の2コーナー立ち直ってから猛然とスパートした。何しろ地元の大垣で先輩二人を後続に従え、初日の島田に捲られた鬱憤を晴らすかのような無心のスパートだった。松尾はあと一周の4コーナーで大きくバンク中段まで駆け上がり、後続を牽制したあと、山おろしを駆けて豪快に逃げた。これは片山 - 鷲田にとって願ってもない展開だった。(2コーナーから片山が捲くってくれれば俺の優勝もあるぞ)最終1センターでそんな期待を持たせてくれた。

 そして、片山はここぞとばかり最終2コーナー渾身の力で捲りに出た。私はその出足に一瞬立ち遅れながらも必死に食い下がった。最終3コーナー、片山が止まった。その瞬間後ろから気配を感じた。(こんなに駆かっているところを捲くってくるのは島田しかいないはずだ)と思った。その通り島田は、私の横を通過していった。なんていう奴だ。松尾の先行を片山が捲り、その上を行くなんてA級戦では考えられないことだった。私は失速した片山の外から島田を追うように最終4コーナーを回った。

 結果はまたしても5着だった。
 きょうは完全な力不足を痛感した一戦だった。しかし、
優勝戦に乗っている限りチャンスは必ず巡ってくるものと、明日から新たな練習意欲が沸いてくるのだった。

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