ハーモニーホールふくい
1997年に完成したハーモニーホールふくい(福井県立音楽堂)にこのほど、パイプオルガンが新設された。この施設は1456名収容の大ホール、610名収容の小ホールを中心に、大きなリハーサルルームや練習室を持つ立派なものだ。しかし、福井県のサイトにも、管理している財団法人福井県文化振興事業団のサイトにもほとんど情報がない。数億円もする高価な楽器なのに不思議だ。
イタリア人男性のオペラ歌手2名を中心としたコンサートのチケットが手に入り、薄暮のハーモニーホールに足を運んだ。夕暮れのハーモニーホールは最も美しい。
横濱商館から車で5分ほどの所にあるが、年に1度程度しか利用していない。最も、美術館や博物館も同じようなものだ。図書館の利用頻度が一番高い。
第一部はピアノとバイオリン、チェロの伴奏で「オーソレミオ」や歌劇の曲を歌うものだった。休憩を挟んで2部は、ピアノを下手に移動させ、地元の合唱団員が60名ほどステージに上がった。
後半にゆっくりとパイプオルガン奏者が鍵盤の前に座り、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲を演奏した。多くの観客は2004年5月にお披露目されたこのパイプオルガンを聞きたくて駆けつけたという感じで会場は静まりかえった。
アタックのない会場全体に響き渡る豊かな音色は厳かな雰囲気を醸し出した。照明も緩やかに落として演奏を盛り上げた。 1987年にユタ州ソルトレイクシティの教会で初めてパイプオルガンに触れて以来2度目の生演奏かも知れない。荒井由実の古いアルバム(1976年)に入っている「翳りゆく部屋」を思い出した。仏教王国の北陸・福井にパイプオルガンがあるというのは何とも不思議な感じを覚えた。高額な投資に見合うだけの収益が望めるのだろうか。
車社会をベースに文化イベントを
確かこの音楽堂を建てるときも福井市中心部にするべきだとの意見も強く、いろいろ揉めていたように記憶している。結果として福井市中心部から福井鉄道を10分ほど南に走ったところに建てられたが、車社会の福井では良い選択だったかも知れない。
敷地が広いのでホワイエ(喫茶コーナーもあるロビー)から眺める噴水付きの中庭もきれいだ。勿論、裏手の駐車場も広い。喫茶コーナーのコーヒーが紙コップなのは興ざめだが、クラスワインを400円で販売しているのはゆったりした気分になれるので良い。飲んでいる人はそれほど多くなかったが。
福井市にはフェニックスプラザ(2000名収容)と福井市文化会館(1300名収容)が大きなコンサートホールだが、市街地なので夜遅くの開催は近所迷惑だろう。
しかし、郊外のハーモニーホールなら可能だろう。この日のコンサートも19時開演とやや遅めであったがそれでも途中から入場してくる人がちらほら目立つ。仕事場から慌ただしく駆けつけた人もいるだろう。腹ぺこで音楽鑑賞どころでは内という人も少なくない。
開催時間を20時頃まで下げ、食事やワインを味わってからゆったりした気分で文化イベントを楽しむようにはできないものだろうか。慌てて各自が運転して駆けつけるのではなく、仲間と車を乗り合わせてやってくると車内の会話も楽しめる。こんな時はタクシーを利用するのも有りだ。アルコールを飲んだ人向けに代行運転を効率的に活用したりすればよいと思う。
終電を気にするような社会ではないのでその利点をもっと利用して生活したいものだ。
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